クラフトマンシップの技が花開く「ホモ・ファベール」

12 Apr 22

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クラフトマンシップの技が花開く「ホモ・ファベール」

グローブ・トロッターは、現在ヴェネチアで開催中の「ホモ・ファベール」に参加しています。ヨーロッパを代表する極上のクラフトマンシップから生み出された工芸品を配置した、インスタレーションルーム『Next of Europe』に、グローブ・トロッターのグレー & キャラメル のケースが展示されています。展覧会のキュレターを務めるアルベルト・カヴァリさんに、現代の「ものづくり」を支える技術の大切さについて、お話を伺いました。

ラテン語で「創る人」を意味するホモ・ファベールは、世界中の優れたクラフトマンシップを紹介するために、ミケランジェロ財団(本部・ジュネーブ)が数年おきにヴェネチアで開催する展覧会です。2022年はフォンダツィオーネ・ジョルジョ・チーニを会場に、22人のキュレーターによって15の没入型展示が制作されました。そこには世界40カ国から、350人を超えるデザイナーや職人が手がけた400点を超える名品が集められています。展覧会は一般公開されるほか、ヴェネチア市内の工房に職人を訪ねる「ホモ・ファベール・イン・チッタ」というイベントが開催されるなど、伝統的な匠の技から最先端の技術まで、さまざまなものづくりの技を多くの人に知ってもらうための企画が実施されます。さらに、オンラインでも現代の名工たちの作品を紹介しているので、身近な場所でどんな世界的な技術が生まれているかを探したり、学んだりすることもできます。


カヴァリさん、今回のヴェネチアでの展覧会の目的、また、ホモ・ファベール・プロジェクト全体の目的について教えていただけますか?

今回のヴェネチアでのホモ・ファベールの基本的な考え方は、人間の才能の素晴らしさを表現する場を作ろう、というものです。才能とはつまり、蓄積された技能を駆使して、クリエイティブに素材を変化させる能力のことです。ホモ・ファベールを提唱しているミケランジェロ財団は、2016年にヨハン・ルバート氏とフランコ・コローニ氏によって創設されたときから、人間の才能というものを活動の中心に置いて、それにスポットライトを当てようと考えてきました。

それは、クラフトマンシップが見過ごされていると感じたからですか?

残念なことに、現代は、高度な技術を持つ職人たちが有名になることはあまりなく、姿を見ることもほとんどありません。彼らは裏方に徹し、身近な商売相手だけに作品を提供します。彼らがもっと活躍するにはコネクションが必要ですし、存在が知られるようになれば、彼らのビジネスにもプラスになると思います。また、クラフトマンシップというものは、ひとたびそれを発見すれば、どんどん深く知りたくなり、そして知れば知るほどますます魅力が増すものなのです。ホモ・ファベールのイベントやオンラインガイドを通じて、皆さんがこうした才能ある職人たちの作品を見付け、感動し、好きになって、できれば直接会いに行ったり、仕事ぶりを見たりするようになってくれるといいと思います。

クラフトマンシップをそのように大切に考える理由は何ですか?

私が思うに、私たちは毎日、選択をしています。自分の家に置くもの、あるいは自分や家族が使うものをどう選ぶのか、という選択です。安く作られ大量に販売されるものを、それがどんなものかもよく分からずに選び、最終的に埋立地行きにするのか、それとも、豊かなストーリーを背景に持ち、サステナブルな製法で愛情と技術を注ぎ込んで作られ、大切にされていることがその姿にも表れているようなものを選ぶのか、ということです。考えてみてください。優れた職人は常にサステナブルです。ものを無駄にしませんし、彼らの作品は地域の象徴ですから、地域を汚したり損なったりすることもありません。

「職人技は品質を意味します。それがグローブ・トロッターと大量生産されたケースの違いです...」


グローブ・トロッターは、その後者のカテゴリでありたいと願っています。

はい、実際に今回のホモ・ファベールにも参加していただき、大変うれしく思っています。グローブ・トロッターは、2022年ホモ・ファベールのメインである『Next of Europe』という展示室にあります。ここは、今回最大の展示室で、手がけたのは、ミラノ出身の現代美術評論家兼キュレーター兼画商のジーン・ブランチャート氏と、同じくミラノ出身で世界的に有名な建築家のステファノ・ボエリ氏、そしてステファノ・ボエリ・インテリアの皆さんです。選び抜かれた200点の名品が展示され、6人の職人が来場者の前で作業をして技を披露します。選ばれたものたちはどれも、職人が想いを込めてつくったもので、過去と現在をつなぎ、そして未来へと私たちを連れて行ってくれるものです。美しい装飾と機能を兼ね備えたそれらの名品のひとつとして、グローブ・トロッターが展示されています。

ということは、グローブ・トロッターのグレー & キャラメル のケースも、装飾美と機能を兼ね備えていると…

まさにそのとおりです。グローブ・トロッターは装飾性と機能性を一体化させることによって、新しいデザイン文化を生み出しました。スーツケースという機能が重視される実用的な道具を、クラフトマンシップとデザインを注ぎ込むにふさわしいものに変えたのです。しかも、「ホモ・ファベール」という視点から見て非常に興味深いのは、これが一点ものではないということです。職人が作る多くの製品がそうであるように、同じものがいくつも作られ、世界中で販売されます。つまり、職人の想いや質の高い手仕事をたくさんの製品に生かすことが可能なんです。これは非常に重要なことだと思います。そういう私たちの想いをグローブ・トロッターの製品が体現してくれていることは、非常にありがたいですね。

From the collection: Centenary Large Check-In and London Square.

では、グローブ・トロッターは、技術とデザインを通じて製品に美意識を注ぎ込むことができていると考えていいのでしょうか?

もちろんです。加えて、品質も素晴らしいです。クラフトマンシップとは、すなわち品質です。品質こそが、グローブ・トロッターと安価なスーツケースとの違いです。飛行機に乗り遅れそうになって走っているときに突然ロックが壊れて下着が飛び出してしまうなんていうスーツケースと違って、職人がつくったものは安心して頼れる相棒になってくれます。

職人が丁寧につくったものと持ち主との間には、心理的なつながりがあると思いますか?

製品をきっかけに、作り手や売り手と買い手の間に対話が始まることがあります。長く使うことを想定してつくられたものだということもありますが、それだけが理由ではありません。私たち人間は、身の回りの世界をクリエイティブに作り変える能力を持った唯一の生き物です。鳥は巣を作りますが、作り方は何百年も前から同じです。一方、人間は日々新しい美のかたちを生み出し、それを手にした人が感動し、その結果、製品に対して、あるいは作り手や売り手に対して、心理的なつながりを感じます。

先ほど、クラフトマンシップが軽視されているとおっしゃいましたが、再び関心を高めることはできるでしょうか?

クラフトマンシップは今、若い世代が夢をかなえる手段のひとつになっています。世の中はデジタル化がどんどん進んでいますが、そんな中でも若い人々は、人間にはリアルの世界でものを作り変える才能があることを再発見しています。機能と装飾の融合に関心を持つ若い世代の作り手と買い手は確実に存在しています。彼らはもちろん、環境に配慮した製品かどうかという点も重視しますが、クラフトマンシップによって生み出された製品は、夢の実現でもあるのです。夢のない世界がサステナブルだと言えるでしょうか? 私は、言えないと思います。

アルベルト・カヴァリさんはミケランジェロ財団(Michelangelo Foundation for Creativity and Craftsmanship) のエグゼクティブ・ディレクターで、2022年 ホモ・ファベールでキュレーターを務めています。同展は4月10日から5月1日まで開催され、展示作品のひとつ『Next of Europe』ではグローブ・トロッターの製品も展示されています。

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